私の経験した忘れられない読書。

私の経験した忘れられない読書。

この頃読書をあまりしなくなりました。年齢を重ねて遠視が進んで本の字が見えにくくなったこともあるのかもしれません。もう一つは本を読む「習慣」からいつしか遠ざかってしまったこともあります。

学生時代は手当たり次第に読んでいました。寝るのも忘れ読みふけり、朝を迎えたこともたびたびでした。また、本を読んだために睡眠不足で起きられず、本分である「講義」に間に合わないこともたびたびでした。

昔から本が好きだったわけではありません。本を読むということがこんなにすごいことなのかという経験をしたことから読書を始めました。ある日親しかった友人(女性)が、何気なく私にその本を読むことを勧め、貸してくれたのです。あまり厚くない文庫本でした。
美脚

「デミアン」ヘルマン・ヘッセ、そう背文字にありました。下宿で夜から読み始めました。主人公とデミアンの出会いから、デミアンの神秘的ともいえる行動などが続きます。あるシーンを読んだ時でした。主人公が自画像を描いているうち、誰かに似ている、誰かに似ていると自分の心を探ります。デミアンだ!そう心で叫ぶ場面を読んだ時、初めて経験する「戦慄」ともいえるものに私は襲われました。

鳥肌が立ち、目の前が真っ白になるような激しい感覚でした。そこまで私を動揺させた理由が何だったのか、いまだにはっきりと言えません。思うのは無意識に描き出そうとしていたのは個を超えた「普遍的なもの」またはデミアンという人物が無意識に主人公の心に入り込んでいた比喩的表現、このことに私の心のどこかが激しく反応したのだと思います。

この経験は、私に本を読むことが人の心をいかに揺さぶるかということを実感させました。その後、たくさんの本を手当たり次第に読みました。だけどおすすめの本を3冊あげなさい、と言われたとしても、なぜか自信を持って勧めることができないのです。不思議なことなのですが・・・。あえて挙げるならこの「デミアン」、ロマン・ロランの「魅せられたる魂」、ロベール・デスノスの「自由か愛か」でしょうか。

ロートレアモンの「マルドロールの歌」、これは全部読みましたが、「第一の歌」の章で大混乱し、「第二の歌」の章で自分に戻れた、そういうある意味過激な名作でした。今反省しているのは、世界の名作全集に収録されているような小説や詩をもっと読めばよかったと思っています。

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